事務所のDM対応が膨らむ3つの理由

まずは、なぜ事務所のDM対応は時間がかかりやすいのかを整理します。

1. アカウントの数だけ受信箱がある

所属タレントが10人いれば、受信箱も10個。TikTokやライブ配信アプリなど複数のSNSを使っていれば、さらに増えます。アカウントを切り替えたりログインし直したりするだけでも手間がかかり、見落としの原因になります。複数アカウントのDMをまとめて扱う方法は、Instagramの複数アカウントのDMを一元管理する方法で詳しく比較しています。

2. DMの種類と重要度がバラバラ

同じ受信箱に、すぐ返すべき仕事の依頼と、お礼だけで十分なファンのメッセージが混在しています。ストーリーズへのリアクションやメンションもDMとして届くため(返信方針はストーリーズへの反応・メンションへの返し方を参照)、件数はさらに膨らみます。1件ずつ開いて内容を読み、重要度を判断してから返す、という作業がDM対応の時間の大部分を占めます。

3. 同じような質問に毎回イチから返している

イベント後の「写真をSNSに載せてもいいですか?」、グッズの再販やチケットに関する質問など、事務所に届くDMには同じ内容のものが繰り返し届く傾向があります。毎回文章を打ち直していると、時間がかかるうえに、担当者によって回答がぶれる原因にもなります。

効率化の鍵は「読む前の仕分け」と「返信の型」

DM対応を効率化するには、①届いたDMを種類で仕分け、②種類ごとに返信の型(テンプレート)を用意し、③誰が対応するかを決め、④対応状況を共有する、という4つのステップで仕組みを作るのが近道です。

  1. STEP 1仕分けるDMを種類と優先度で分類
  2. STEP 2型をつくる種類ごとの返信テンプレート
  3. STEP 3任せる担当と閲覧範囲を決める
  4. STEP 4見える化未対応・対応中・完了を共有
図:事務所のDM対応を仕組み化する4ステップ

STEP1:DMを種類で仕分けるルールを作る

最初に、届くDMをいくつかの種類に分け、それぞれの優先度と対応方針を決めます。事務所に届くDMは、おおむね次のように分類できます。

分類よくある内容優先度対応方針
仕事依頼タイアップ・PR案件、イベント出演、取材、スカウト高当日中に一次返信し、担当マネージャーへ取り次ぐ
お問い合わせグッズ・チケット・イベント詳細、写真の掲載可否中テンプレートで回答。判断が必要なものは担当へ
ファンレター応援メッセージ、配信や出演の感想低〜中方針に沿ってお礼を返す/タレント本人へ共有
要注意誹謗中傷、過度な要求、なりすましや詐欺が疑われる連絡要確認返信せず記録し、責任者へエスカレーション

ポイントは、分類を細かくしすぎないことです。最初から10種類以上に分けると、仕分けそのものに迷いが生じます。まずは上の4分類程度から始め、運用しながら「この種類は独立させたほうが楽」というものだけ追加していきましょう。

また、仕事依頼に見えて実は詐欺的な勧誘、というケースもあります。「仕事依頼」と判断したDMも、相手の企業名や担当者を確認してから進める、というルールをあわせて決めておくと安心です。怪しい案件DMの見分け方と確認の手順は、インフルエンサーへの案件DMは詐欺?怪しい仕事依頼の見分け方で詳しく解説しています。

STEP2:返信テンプレートを用意する【例文つき】

仕分けのルールができたら、種類ごとに返信テンプレートを用意します。テンプレートは「そのまま送れる文面」にしておき、必要に応じて名前や日付だけ差し替える形にすると、担当者が変わっても回答の品質がそろいます。以下は、事務所でよく使われる場面を想定した例文です。自社の方針に合わせて調整してご利用ください。

仕事依頼タイアップ・出演依頼への一次返信

ご連絡いただきありがとうございます。 ○○の所属事務所でございます。 お仕事のご相談につきましては、担当マネージャーより改めてご連絡いたします。 お手数ですが、貴社名・ご担当者様のお名前・ご連絡先・ご依頼内容の概要をお送りいただけますと幸いです。

お問い合わせイベント後の写真掲載の確認

ご来場いただき、ありがとうございました! イベントで撮影いただいたお写真は、〇〇のルールの範囲内でSNSに投稿いただけます。 詳しくはイベント告知ページの注意事項をご確認ください。今後とも応援よろしくお願いいたします。

お問い合わせグッズ・チケットに関する質問

お問い合わせありがとうございます。 グッズ・チケットの最新情報は、公式サイトおよび公式SNSでお知らせしております。 決まり次第ご案内いたしますので、引き続きチェックしていただけますと嬉しいです。

ファンレター応援メッセージへのお礼

温かいメッセージをありがとうございます! いただいたお言葉は本人にもしっかり届けさせていただきます。 これからも応援よろしくお願いいたします。

お断り個別の対応が難しい要望へ

ご連絡ありがとうございます。 大変恐縮ですが、個別のご要望にはお応えしかねております。 何卒ご理解いただけますと幸いです。

テンプレートを作るときは、次の3点を意識すると運用しやすくなります。

  • 誰が返しているかを明確にする:事務所が対応しているのに、タレント本人が返信しているように見える文面は避けましょう。ファンの誤解やトラブルの原因になります。
  • 約束しすぎない:「必ず本人が読みます」「◯日までに返信します」など、守れるか分からない約束は書かないのが無難です。
  • 最終確認は人が行う:同じテンプレートでも、DMの内容によっては合わない場合があります。送る前に担当者が内容を確認する運用にしておきましょう。テンプレートを自動送信に使う場合の線引きはInstagram DMの自動返信のやり方で解説しています。
仕分けとテンプレ選び、AIに任せませんか AIがDMを内容で仕分けて、返信テンプレを推薦。

タレントDMマネージャーなら、ファンレター・仕事依頼・お問い合わせなどの仕分けとテンプレ推薦をAIが行い、送信の判断は担当者が行います。

仕組みを見る

STEP3:担当と権限を決める

次に、「どのタレントのDMを、誰が対応するか」を決めます。マネージャーが担当タレントのDMを見る、仕事依頼だけは営業担当が引き取る、ファンへの返信は業務委託スタッフに任せる——といった具合に、役割を明確にしておくと迷いがなくなります。

このとき注意したいのが、タレントのログインID・パスワードを共有しないことです。ログイン情報をスタッフに渡すと、退職や契約終了のたびにパスワードを変更する必要があり、漏えいすれば乗っ取りなど大きなトラブルにつながりかねません。公式の権限付与機能や、ログイン情報を預けずに使えるツールを利用し、「任せる範囲」だけを渡す形にするのが理想です。

役割担当範囲の例ポイント
担当マネージャー担当タレントのDM全般、仕事依頼の判断案件化するかの最終判断を持つ
チーム内スタッフお問い合わせ・ファンレターへのテンプレ返信判断に迷うDMはマネージャーへ回す
業務委託スタッフ特定タレントのファン対応のみ閲覧・返信できる範囲を必要最小限に
責任者要注意DMの判断・対応方針の決定エスカレーション先を1人に決めておく

STEP4:対応状況を見える化する

複数人でDMに対応する場合、最も起きやすいのが二重返信と返し忘れです。「誰かが返しただろう」と思って放置されたり、同じファンに2人が別々の返信をしてしまったり。こうしたミスを防ぐには、DMごとに対応状況を共有する仕組みが欠かせません。

おすすめは、すべてのDMを次の3つのステータスで管理する方法です。

  1. STATUS未対応まだ誰も手をつけていない
  2. STATUS対応中担当者が確認中・取り次ぎ中
  3. STATUS完了返信・取り次ぎが済んだ
図:DMの対応ステータスはこの3つで十分

スプレッドシートで管理する方法もありますが、DMを見る画面と管理表が別々だと、転記の手間や更新漏れが発生しがちです。DMの画面上でそのままステータスを付けられる仕組みにすると、運用が長続きします。

DM対応で事務所が気をつけたい5つの注意点

効率化を進める一方で、タレントのアカウントを預かる事務所として気をつけたい点もあります。

1. タレント本人とルールを共有する

事務所がどのDMに、どのような文面で返信するのかは、事前にタレント本人と合意しておきましょう。本人が個別に返信したいDMとの線引きを決めておくと、二重返信や食い違いを防げます。

2. なりすましと誤解されない文面にする

事務所スタッフが返信する場合は、テンプレート例のように事務所からの返信だと分かる文面にしておくと誠実です。AIを活用する場合も、AIが勝手にタレントとして発言するのではなく、人が確認して送る運用にしておくのが安心です。

3. 未接触の相手への一斉送信はしない

「まとめて返信」は、すでに届いているDMへ効率よく返すための方法です。やり取りのない相手へこちらから同じ内容のDMを大量に送る行為は、各SNSでスパムとみなされアカウント制限につながるおそれがあります。プロモーションの告知は投稿やストーリーズで行い、DMは届いたものへの返信にとどめるのが基本です。

4. 個人情報を適切に扱う

DMには、ファンや取引先の連絡先などの個人情報が含まれることがあります。閲覧できるスタッフを必要な範囲に絞り、スクリーンショットの持ち出しなどについても社内ルールを決めておきましょう。

5. トラブルの兆候は記録して共有する

誹謗中傷や執拗なメッセージ、脅迫めいた内容などは、返信せずに記録を残し、責任者に共有します。内容によっては、各SNSの報告・ブロック機能の利用や、専門家・警察への相談を検討してください。担当者が1人で抱え込まない体制づくりが大切です。

ツールでDM対応を仕組み化するという選択肢

ここまで紹介した4つのステップは、手作業でも実践できます。ただ、所属タレントやDMの量が増えるほど、アカウントの切り替え、仕分け、テンプレートのコピー&ペースト、ステータスの更新といった作業そのものが負担になっていきます。

そこで選択肢になるのが、事務所のDM対応に特化したツールです。たとえばタレントDMマネージャーでは、次のように各ステップを1つの画面で行えます。

ステップ手作業の場合タレントDMマネージャーの場合
DMを見るアカウントごとにログインし直す所属タレント全員のDMを1画面に集約
STEP1 仕分け1件ずつ読んで判断AIがファンレター・仕事依頼・お問い合わせなどに仕分け
STEP2 返信テンプレートをコピーして1件ずつ送信AIが推薦したテンプレで、同じ内容のDMにまとめて返信(送信の判断は担当者)
STEP3 担当ID・パスワードを共有しがちタレント・アカウント単位で担当割り当てと権限管理。ログイン情報を預ける必要なし
STEP4 見える化別のスプレッドシートで管理未対応・対応中・完了が画面上でチーム全員に見える

連携には各プラットフォームが用意する公式の連携機能を使い、つなぐのはDMのやり取りだけです。また、「まとめて返せる」のはすでに届いたDMへの返信であり、やり取りのない相手への一斉送信はできない設計になっています。

事務所全体での導入が前提ではなく、マネージャー1名・担当タレントの分だけから相談できるので、「まず自分の担当分で試してみたい」という場合にも検討しやすいはずです。

まとめ

この記事のポイント
  • 事務所のDM対応が膨らむ原因は「受信箱の多さ」「種類のバラつき」「同じ質問への個別返信」
  • STEP1:DMを仕事依頼・お問い合わせ・ファンレター・要注意の4分類程度で仕分ける
  • STEP2:種類ごとに返信テンプレートを用意し、事務所からの返信だと分かる文面にする
  • STEP3:担当と閲覧範囲を決め、ID・パスワードは共有しない
  • STEP4:未対応・対応中・完了の3ステータスで対応状況を共有する
  • 未接触者への一斉送信はせず、個人情報やトラブルの扱いにもルールを設ける

DM対応は、所属タレントとファン、そして仕事相手をつなぐ大切な窓口です。仕組みを整えて「返し忘れ」と「打ち直し」を減らせば、マネージャーはタレントのサポートや新しい仕事づくりにより多くの時間を使えるようになります。まずは今週届いたDMを4つに分けてみるところから始めてみてください。